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久々に元文字書きの血がたぎったので書いてみました。
ガゼルとクララの雰囲気小説です。なんでも雰囲気でごまかせると思っててすみません。
あ、くどいですがまたネタバレ?です。というか9章までいってないとよく分からない話…
ガゼルとクララの雰囲気小説です。なんでも雰囲気でごまかせると思っててすみません。
あ、くどいですがまたネタバレ?です。というか9章までいってないとよく分からない話…
欲しいものは手に入らない。なぜなら、手には入ってしまったらその時点で興味が薄れてしまって、どうでもよくなるからだ。だから欲しいものは手に入らない。きっと、ずっと永遠に手に入らないのだ。
「ガゼル、あんまり見ていると目を傷めるわ」
少女はなんてことのない動作でさっと少年の視界を閉ざした。他人の手が触れるという行為に気後れする暇さえ与えない。少女は繊細なのではなく酷く鈍いのだ、と少年は思っていた。閉ざされた視界の先では、まだあの場所が爆発に巻き込まれて粉々になっている光景が続いているのだ。激しく明滅する光は、確かに目に良くないのかもしれなかった。心にも。良い思い出ばかりではないが、なんにせよあの研究所には思い出がありすぎた。少年は少しだけ息を止めた。少女は鈍いから気付かなかっただろうと勝手に思い込んで、言い訳は考えなかった。
じわり滲んだ涙。
「私たちは、これからどうするのかしら?」
少女は少年の視界を閉ざしたまま呟いた。
「どうもしない。今まで通り、練習を続けるだけだ」
「ジェネシスになるため?」
「違う。ジェネシスを越える」
「そうね」
と、少女はどうでも良さそうに言った。もう、その名には何の意味もないもの。
どん、と一際大きく爆炎がはぜた。少女はようやく少年の視界を解放し、少年の瞳を見た。
「クララ、わたしは間違っているか?」
あの人に認められたかった。あの場所が欲しかった。ずっとずっと欲しかったんだ。
「いいえ、間違ってなんかいないわ。私たちは当然の権利を主張して、それに見合う努力をしてきたのだもの。それには正しいも誤りもなかったわ」
じわりと滲んだ涙を拳でぐっと拭うと、少年はいつもの無表情に戻って、その後はもう一度も消えてなくなった居場所を振り返ることはなかった。
届かなくてもよかった
(091009/ガゼルとクララ)
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